高血圧の薬は一生飲まないといけないの?いっぱい種類があるけどなんで?わかりやすく説明してみた
こんにちは、薬剤師ハヤシです。
薬局に来られる患者さんの中には高血圧のお薬を飲まれている方も多いのですが、初めてお薬を飲まれる方から
「これって飲み始めたら、一生飲まなあかんのやろ?」
って言われることも少なくありません。
ハヤシ
そんな風に考えている人って多いかも。
ぱっつん
高血圧症は日本において実に3分の1もの人が患っており、隠れ高血圧を合わせるとそれ以上と言われています。
そんな国民病とも言うべき高血圧に対して現状処方されるお薬はたくさんあり、数種類を併用している人も少なくありません。
うちのオカンも2種類くらい飲んでるわ。
ぱっつん
ほうほう。
ハヤシ
そして、高血圧のお薬は飲み始めると「一生飲み続ける」というイメージもあり、服用を開始するのをためらう人も実際にいます。
今回は高血圧のお薬について。
「高血圧のお薬は一生飲まないといけないというのはホントなの?」
「なぜ、一度に何種類もお薬を飲んでいる人が多いの?」
これらの疑問について解説していきます。
高血圧のお薬を飲んでいる方やご家族が服用している方、是非ご参考にして下さい。
ハヤシ
ちなみに前回はこんなお話をしました。
ハヤシ
高血圧のお薬は、一生飲まないといけないの?
そもそも高血圧は大きく2つに分類されます。
1つは腎臓などのホルモンの異常、飲んでいるお薬による副作用などが原因でおこる「二次性高血圧」。
もう1つが原因がわからない、はっきりしない「本態性高血圧症」です。
そして、実は日本人の高血圧患者のほぼ9割が本態性高血圧なのです。
本態性高血圧の原因は塩分の摂りすぎ、肥満、ストレス、遺伝的要因、運動不足、喫煙など数えたらきりがないくらいたくさん挙げられ、はっきりとわかりません。
原因がはっきりわからんのやったら、なんで血圧の薬飲まなあかんの?
ぱっつん
そう思っても無理ないかもな。
でも、これにはちゃんと理由があるねん。
ハヤシ
高血圧のお薬を飲む理由は高血圧症を治療するのではなく、高血圧が影響する病気の「予防」を目的としているのです。
予防?
ぱっつん
高血圧の状態を放置すると血管に過度な負担がかかり続け、動脈硬化が進行。
脳や心臓、腎臓といった臓器にダメージを与えて、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病の原因をなってしまうのです。
だから、血圧をコントロールしてそのリスクを回避するのに高血圧のお薬を飲んでもらってるってわけ。
ハヤシ
なるほど。
ぱっつん
本来、高血圧の治療には非薬物療法と薬物療法があります。
このうち、非薬物療法は生活習慣の改善、食事療法、運動療法とあり、これらすべてにバランスよく取り組むことで効果を得ることが出来ますが、どれか一つでも不十分な場合はなかなか血圧を下げることが出来ないことが多いです。
実際には薬物療法に移行していく人も多く、その場合は先ほどもお話ししたように予防と意味でも長く飲み続けていただくことになります。
すべての人が必ずしも「一生飲まないといけない」というわけではありませんが、そうなる人が多いです。
それは血圧を下げることだけが目的ではなく、高血圧が原因の恐い病気の予防が目的だからです。
ハヤシ
そっか。
じゃあ、血圧下がったからって飲むの止めたらアカンね。
ぱっつん
うん。
自己判断で中止するのは絶対にダメ。
きちんと医師の診断、判断に従ってな。
ハヤシ
高血圧のお薬を何種類もなぜ飲むの?
血圧のお薬を飲んでいる患者さんが周りにいる人は「なんでこんなに血圧のお薬ばっかり飲んでるの?」って思ったことあるのではないでしょうか?
あるある!
うちのオカンも2種類飲んでるわ。
ぱっつん
いくつかのお薬を併用している人は多いからね。
ハヤシ
高血圧のお薬はいくつか種類があり、それぞれたくさんのお薬が販売されています。
主な分類と成分について下記に示しました。
主な血圧を下げるお薬
効果による分類 | 主なお薬の分類 | 主な成分 |
血管を拡げる | ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) | カンデサルタンシレキセチル、ロサルタンカリウム、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル |
ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬 | カプトプリル、エナラプリルマレイン酸 | |
カルシウム拮抗薬 | アムロジピンベシル酸、シルニジピン、ニフェジピン | |
α遮断薬 | ドキサゾシンメシル酸、ウラピジル | |
血液量を減らす | 利尿剤 | ヒドロクロロイアジド、スピロノラクトン |
β遮断薬 | プロプラノロール、メトプロロール、アテノロール |
高血圧治療ガイドライン2014によると高血圧でもリスクが高い、例えば160/100mmHg以上の場合などは服用開始から少量のお薬を2剤併用することがあります。
しかし、多くの場合は単剤から開始。
ただし、この場合も十分な効果が得られない場合は増量もしくは他のお薬を少量併用することになります。
だったら、1種類のお薬を量増やして飲む方が良くない?
ぱっつん
確かに種類が増えるとそれだけ飲み忘れの可能性が高くなるからな。
でも、一方で増量することで副作用のリスクが高まるってことも考えられるよね。
いずれにせよ、医師は総合的に判断して患者さんにとってどちらがいいかベストな処方をしてるから安心して。
ハヤシ
そっか。
ぱっつん
お薬が1剤だから良い、2剤だから悪いのではなく、それぞれの患者さんの状況に対してベストな処方がされているのでまずは指示通りしっかりと服用するようにしましょう。
高血圧のお薬さえ飲んでいれば万事OK?
血圧のお薬を飲んでさえいれば、「今まで通りの生活をしていても大丈夫!」というわけではありません。
そうなん!?
ぱっつん
あくまでも高血圧のお薬は運動療法や食事療法に取り組んでいることを前提に処方されています。
(一部、運動を止められている方は除いて)
血圧のお薬を飲む前と同じような生活を続けていれば、お薬の量や種類が増える可能性は高まります。
逆に生活改善に取り組むことで医師の指示のもと、お薬の量を減らせる可能性も。
お薬を飲んでいれば万事OKとは思わず、しっかりと生活改善にも取り組みましょう。
ハヤシ
まとめ
高血圧のお薬を飲むことは単に血圧を下げることが目的ではなく、それが原因となる脳や心臓への病気の予防であることを理解しましょう。
お薬を一生飲み続けるケースもありますが、それはこうしたリスクを減らすため。
だから、血圧が下がったから「治った」とは思わず、しっかりと飲み続けること。
決して自己判断で中止しないでください。
日本人の3分の1以上の人が患う高血圧。
僕もあなたも十分になる可能性があります。
その時に、今回のお話を思い出していただけると幸いです。
みなさまのご健康を願っております。
大阪、寝屋川市の薬剤師ハヤシでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ハヤシ