ちゃんと理解している?血液をサラサラにするお薬と納豆はダメ!?誤解しないように解説してみた
こんにちは、薬剤師ハヤシです。
「血液サラサラの薬を飲んでるんやけど、納豆食べたらあかんの?めっちゃ好きやのに~」なんて患者さんから言われることって結構多いです。
関東ほどではないと思うけど、大阪でもご年配の患者さんになると朝ごはんに納豆を食べる人って結構多いで。
ハヤシ
うちのオカンもよう食べてるわ。
ぱっつん
ただ、ひと口に「血液をサラサラにするお薬」と言ってもその種類はたくさんあります。
ですから、あなたが「血液をサラサラにするお薬」を飲んでいたとしても納豆を食べちゃダメとは限りません。
今回は血液をサラサラにするお薬にはどんなものがあって、納豆を食べちゃダメなのはどのお薬なのかを中心に解説してみようと思います。
よくあるこの誤解を解いて、正しい知識を身に着けてもらうためにも是非ご参考にしてください。
ハヤシ
了解!
ぱっつん
ちなみに前回はこんなお話をしました。
ハヤシ
いっぱいある!血液をサラサラにするお薬
血液をサラサラにするお薬といっても色々あって、
大きくわけると「抗血小板薬」と「抗凝固薬」の2つに分類されるんや。
ハヤシ
なんか難しそうやなぁ~
ぱっつん
この2つはその名の通り、血液が固まるのにかかわる「血小板」もしくは「血液凝固因子」のいずれかを阻害して血のかたまり(血栓)が出来ないようにします。
抗血小板薬って何?
心臓から送り出される血液が通る血管を動脈といいますが、実はこの動脈でできる血栓には血小板が関わっています。
血液の流れが速いとされる動脈で血栓が出来ないように予防するのが抗血小板薬なんや。
ハヤシ
ほうほう。
ぱっつん
例えば、高血圧や糖尿病、高脂血症といった病気の人は動脈硬化が進む恐れがあります。
動脈硬化とは動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりすることで血管として働きが悪くなること。
そして、この動脈硬化が進むと血栓が出来やすくなってしまうんです。
こうやってできた血栓は血管を詰まらせて、細胞や筋肉を壊死させてしまうこともあるんや。
ハヤシ
怖っ!
ぱっつん
そうしたリスクが高くならんように予防するのが抗血小板薬というわけ。
ハヤシ
なるほどね。
ぱっつん
主な抗血小板薬としては
バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、パナルジン(チクロピジン)、エフィエント(プラスグレル)、プレタール(シロスタゾール)
※()内は成分名
などが挙げられます。
抗凝固薬って何?
各組織から心臓へと戻ってくる血液が通る血管を静脈といい、この静脈でできる血栓には凝固因子が関わっています。
今度は血液の流れが遅いとされる静脈で血栓が出来ないように予防するのが抗凝固薬なんや。
ハヤシ
そうなんや。
ぱっつん
心不全や不整脈といった心臓の疾患がある方は心臓の働きが規則的でない場合があり、血液の流れが悪く血栓が出来やすい状態になっています。
もし仮にこうしてできた血栓が脳や肺に飛び、血管を詰まらせてしまうととても重篤な病気になってしまうリスクが...
こうした状況を回避するために血栓ができるのを予防するのが抗凝固薬というわけ。
ハヤシ
さっきとちゃうな。
ぱっつん
主な抗凝固薬としては
ワーファリン (ワルファリン)、イグザレルト (リバーロキサバン)、エリキュース(アピキサバン)、プラザキサ (ダビガトラン)、リクシアナ (エドキサバン)
※()内は成分名
などが挙げられます。
実は納豆がダメなのはワーファリンだけ!
とここまでいわゆる血液をサラサラにするお薬を詳しく紹介してきたわけですが、気になる「納豆を食べちゃダメ!」なのは
このうちのワーファリンというお薬だけ。
ハヤシ
えっ!?
ぱっつん
他のお薬は納豆を食べてもその効果に影響はありません。
ハヤシ
そうなん!
ぱっつん
では、なぜワーファリンだけがダメなのか?
それはワーファリンが血液を固めるいくつかの凝固因子のうちの「ビタミンK」を阻害することで効果を得ていることが原因。
納豆を食べると、納豆菌が大腸の中ででビタミンKを合成するねん。
だから、ワーファリンの効果が弱まってしまうんや。
ハヤシ
なるほど~。
ぱっつん
ビタミンKは納豆の他にも、緑葉野菜やクロレラ、青汁などにも多く含まれているので食べるのを控える必要があります。
また、ワーファリンを服用中の方でその効果が思ったように得られていない場合、
これは薬剤師として仕事をしている時の印象なんやけど。
緑茶を好んで飲まれてる人が多い気がするねん。
食べ物は注意しても飲み物まではあんまり気にしてなくて意外と盲点なんかもしれへんなぁ。
ハヤシ
確かに。
飲み物まで気が回らんかも。
ぱっつん
じゃあ納豆が食べたいなら、ワーファリンじゃなくて他の抗凝固薬に変更すればいいのでは?
そう思われる方もいるでしょう。
当然、患者さんの病状や腎機能の状態などをもとに医師が選択するのですが、問題の一つとなるのが薬価。
ワーファリン以外の抗凝固薬、めっちゃ高いんです...
ハヤシ
ワーファリンが安いというのもありますが、とはいえ他のお薬が高い。
ワーファリンが0.5mg、1mgともに1錠9.8円、5mgでさえ1錠10.1円なのに対して、例えばイグザレルトは10mgが1錠364.1円、15mgが1錠517円もするねん。
※2020年4月改定薬価
ハヤシ
めちゃめちゃ高いやん!
ぱっつん
納豆が食べたいからと言って「じゃあ変えようか?」と安易にすすめることのできる値段では...
おまへん。
ハヤシ
ともかく納豆を食べちゃダメなのはワーファリンだけ!
血液をサラサラにするお薬を飲んでいるからといってみんなが納豆を食べれないのではないことを理解しましょう。
血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方が注意すべきこと!
血液がサラサラになるということは言い方を変えれば出血がしやすく、出血すると止まりにくいとも言えます。
そのため、日常の生活の中で注意すべきことがいくつかあります。
当然、転倒などによる怪我に注意し、打撲でも内出血をしやすいので注意です。
また、歯科で治療を受ける際には必ず事前に歯科医にお薬を飲んでいることを伝えるか、お薬手帳を見せるようにしましょう。
ハヤシ
まとめ
血液をサラサラにするお薬を飲んでいると納豆は食べちゃダメと誤解している方は意外と多いです。
これはあくまでもワーファリンを服用している人だけで、その理由は今回よく理解できたのではないでしょうか?
ひと口に血液をサラサラにするお薬といっても、どういったところにできやすい血栓を予防するのか、血小板もしくは凝固因子のどちらを阻害するのかによって違いがあります。
これらのお薬はどのお薬も服用している方にとってきちんと効果を得ることで健康を維持するのに欠かせないもの。
気になるようでしたら、一度かかりつけの薬剤師によくご相談してみて下さい。
みなさまのご健康を願っております。
薬剤師ハヤシでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ハヤシ